【ルーマニア・ノートより】 磯田 和一
ドラキュラ伯の故郷ルーマニアを旅した。悪しき社会主義から自由を勝ち得て十数年、今はまだ貧しくとも、将来に希望があるためだろうか人々は明るく朗らかで、親切で優しかった。特に気に入ったのは、世界遺産の指定を受けている古都シギショアラで、ここには12〜13世紀に造られた町並みが、今もそのままに残っていて、どこをどう歩いても、まるで町全体が発掘された遺跡のように思われ、感動と感歎の溜息が途絶えることがなかった。しかしこの国で唯一困ったことは、国鉄の車両の汚さで、1等車にしてシートが破れたまま、掃除などしないのだろうか、車窓の硝子も曇りに曇っていることである。それに僕などは、列車に乗る度にわが柔肌をダニたちに噛まれる有様、いかにヴァンパイアの故郷とはいえ、ダニに血を吸われるのには参った。それでも僕は、どうしてもルーマニアを再訪したいと思っている。
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